娘の秘密と母娘の会話

ある日曜日の夕方、三歳の娘が「あしたほいくえんにいきたくなあい」とダダをこねはじめた。いつものことだ。理由はわかっている。大抵の場合、お給食が大好きなパンやうどんではないのが理由だ。パンは週に一回、うどんは2週間に一回くらいしか出ないので、基本的に週に3〜4日は娘にとって保育園に行きたくない日、なのだ。

と、理由はわかっていながらも、一応聞いてみる。

「なんで行きたくないの?」「おきゅうしょくとといれがいやだから」

トイレ?はて。初めて出てきたワードだったので気にはなったが、その場ではお給食の話だけをした。

「確かにお給食はパンではないけれど、明日のおやつはフライドポテトだよ!まどちゃん(娘)が行かないならお母さんが行ってフライドポテト食べよ〜っと!」「だめー!まどちゃんがたべる〜!」

いつもこんな会話で”保育園行きたくないダダ”は終わる。

その日の夜、布団の中で娘がまた「あしたほいくえんいきたくない」と言い出した。「でもおやつフライドポテトだよ?いいの?」とわたしが言うと、「といれがいやなの」と。どうしてトイレが嫌なのか聞いてみると、トイレに行って座ってもおしっこが出ない時があって、そのあと出なかったことを先生に伝えると怒られるから、とのことだった。(さすがに怒られているわけではないと思うが、しつこく言われるのかもしれない)

まあ、どちらの気持ちもわかる。クラスのみんなでトイレに行く時間は決まっていて、自分がおしっこをしたいタイミングではないときだったら確かに出ないかもしれない。

でも先生からすると、トイレに座れば多少なりとも出るから、という気持ちなのかもしれない。家でも出かける前は強制的にトイレに座らせるし、出ないと言われても「出るよ!出る!」と言ってしまうのし、先生と同じことをしている。

そんなことをぼんやり考えていると、娘が言った。

「でもね、ときどき、おしっこがでなかったことをひみつにするの」

その一言に、なぜだか胸がぎゅーんとなった。か、か、かわいい……三歳にして、秘密にするということを自らの経験をもって学び、実践したのか。そしてその秘密を寝る前にこっそりとわたしに教えてくれたのか。もう一度言う、か、か、かわいい……。

そういえばわたしも子どもの頃、家以外のトイレが嫌いだった。理由はよく覚えていないのだけれど(和式が苦手だったからかなあ、わたしが子どもの頃は今ほど洋式が普及していなかったし)、とにかく極力外出先や学校ではトイレに行かなくて済むように水分をあまり取らないようにしていた。

わたしもこっそりとそんな話を娘にして、一緒だねと笑い合った。すると娘がぽつりと一言。

「なんだかうれしいきもちになった」

ああ、母娘の会話って、こんな感じなんだなあ、これからたくさんこんな話ができるようになっていくんだなあ、と思うとわたしまでなんかうれしいきもちになって、幸福感に包まれたまま眠りについたのである。

おわり。

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